第61回(2019/10/05)
本当は今月号の院長コラムでは永ちゃんのアルバムの話を書こうと思って楽しみにしていたのですが、急遽9月9日の未明に千葉県に上陸した台風15号の事を書くことにしました。皆様、台風の影響は大丈夫でしたでしょうか?
私の自宅は台風通過の月曜日の未明から、2日間停電と断水だったのですが、幸いにクリニックは2日間電話がつながらなかった事以外は電気、水道も大丈夫で通常通り診療をすることができました。
月曜日の朝、いつもの自宅からクリニックまでの道を歩いて行ったのですが、街路樹が倒れ、信号は曲がり、しかも点灯しておらず、車の交差点での渋滞がおき、マンションの駐車場に止めてある車のガラスが割れているのが何台もあり、これはただ事ではないと朝になってはじめて、この台風の被害の大きさに驚きました。
クリニックに到着し、幸い大きな被害がないことに少し安堵しましたが、スタッフがこれるかどうか、患者さんがこれるかどうかなど心配になりました。結局、一人のスタッフはモノレールが運転stopで午後から、一人は自宅が停電と断水の中、午後から来てくれました。
まずはクリニックの電話がつながらないため、急遽LINEで通常通り診療していることを発信しました。幸いにネットが使えたため、周りの病院、診療所の先生方の診療情報を検索しました。
石渡内科の竹下先生は停電のため休診であることをクリニックのパソコンが使用できないため、ご自宅からホームページにアップされ、クリニックの電話が通じないため、おそらくご自宅だと思いますが、対応できる電話番号を載せて患者さんとの対応にあたられていました。
ふるかわクリニックの布留川先生はツイッターにて通常通りに診療されていることを発信され、ぬまざわ小児科・耳鼻咽喉科の沼澤先生はホームページで休診のご案内をされていました。
平沢小児科の平沢先生は停電のためクーラーが使えず暑いのと室内が暗いため、クリニックの窓を全て開けられ、電気のつかない中でも子供さん達のために診療をされていました。
月曜日はこられない患者さんも多かったのですが、電話も通じないため、直接私が診療しているどうか確認にこられ、そのまま診察をさせていただいた患者さんもいました。
この時は被害の状況をまだ甘く見ていて、今日中にでも電気は復旧するだろうと思っていたのですが、夜になっても自宅の電気、水道が使えないため、家族、ペットともクリニックで寝泊まりすることにしました。
とりあえず、お風呂に入りたかったので、銭湯に行きましたが、車がいっぱいでとても入れそうになく帰ってきました。途中のコンビニ、スーパーも食べ物もなく、ガソリンをいれるのに数時間待ちとあの東日本大震災の時を思い出させるパニック状態でした。
火曜日の朝に千葉中央メディカルセンターの外来に行ったところ、真っ暗で外来は休診となっていましたが、院長先生の福田先生はじめ、制服ではなく、Tシャツ姿に首にタオルを巻いたスタッフの方々が朝早くから患者さんの案内に奔走されていました。(後日福田先生からお聞きしたのですが、この時千葉中央メディカルセンターではもちろん自家発電はあったのですが、すべての患者さんで使用できる電力はなく、200人以上いた入院患者さんを状態をみて一時自宅待機、転院の手配をし2日で50人以下の入院にし、復旧後、その方々を迎えにいくという大変な作業をこなしたそうです。)
火曜日のメディカルセンターの自分の外来が休診となった私は何かお手伝いできることはないかと考え、本来休診日の火曜日に急遽自分のクリニックをあけることにしました。スタッフはお休みですので、家内と浪人中の息子を呼び出し、自宅で暑さでばてていた犬もつれてきてクリニックをopenし、メディカルセンターに当院が臨時で開いていること、軽症の患者さんなら対応できることを伝えました。どれほどのお役に立てたかは疑問ですが、それでも受診された患者さんには喜んで貰えました。
また台風後の復興には私達医療者だけではなく、市民の多くの方々が努力されていました。私が出勤するとき、倒れた街路樹が車道にはみだし、危ないと感じ、それを歩道によけていたのはなんと中学生の男の子二人組でした、クリニックの前のショッピングセンターのラパークでは、携帯の充電の無料サービスと冷房の効いた1階で休息所の提供、スポーツクラブのビック・エスさんではお風呂の無料開放を実施、私も、私の家族もお世話になりました。
私の患者さんのエレベーター屋さんは3日3晩の徹夜で、エレベーターの復旧に、東京電力で普段は受付業務をしている女性の患者さんは、他の受付のスタッフも受付が終わってから復旧工事の現場にお手伝いにいっている事をお話してくれました。また役場に勤めている方々は被害状況の確認、避難所の運営など、みんなそれぞれが出来る事をして一刻も早い復旧に努力していることを知りました。
台風の被害にあったことは不幸でしたが、皆さんそれぞれが考えること、得ることもあったのではないでしょうか?ここで、もう一人私の患者さんのお話をしますね。
この患者さんは30代のお母さんです。東北の震災時、宮城で被災し千葉に引っ越してこられた方です。この方は台風情報をニュースでみて、震災の時にトイレが流せなくて山積になり、食べ物にも困った事を思い出し、お風呂、洗面器、バケツなど水をためておけるものには全て水をため、家にある炊飯器2杯分のお米を炊き、全てをおにぎりにして準備をされたそうです。翌日、停電、断水になって困っているご近所の方の子供さんの面倒をみて、おにぎりも配ったそうです。自分が震災の時にお世話になったのをいつか恩返ししたいと思っていたそうです。
千葉に生まれ、長年千葉に住んでいる私の患者さん達からは「こんなひどい台風ははじめてだ」と聞きました。もしかしたら心のどこかで、千葉は大丈夫だと油断があったのかもしれませんね。私がこの原稿を書いている時点でまだ千葉では7万戸が停電しており、屋根にはブルーシートがかかり、屋根屋さんが来て治してくれるのはまだまだ先と不自由な生活をしている方々もいる状況です。
そんな中、以前からの約束であった静岡の三島での漢方の講演に行ってきました。静岡は幸いにそれほどの台風の被害はなくて良かったのですが、少し講演に行く前に、千葉がこんなに大変なときに講演に行ってる場合なのかな?とも思ったのですが、少し考え直して、自粛するのではなく、私が今できることをしよう、その事が、またみんなの役に少しでも立てれば良いと思い、高齢者疾患、痛みに使う漢方、ストレス疾患に使う漢方のお話をして、その中で少し災害時に役にたった漢方のお話もさせていただきました。
静岡では美味しいお寿司を頂き、富士山をみながら温泉で疲れを癒やす事ができました。おかげで、また次の日から千葉での診療をがんばる事ができました。静岡での講演にお忙しい中、ご参加頂いた先生方、また講演の準備をしてくれた現地のスタッフの皆様に感謝致します。みんなで協力して、この台風の被害を乗り切り、今後の糧にしましょう!!