第20回(2016/05/06)
5月5日は端午の節句で、その供物としてよく用いられるのが柏餅です。柏の葉は新芽が育つまでは古い葉が落ちないことから「子孫繁栄(家系が途切れない)」という縁起を担いだものとされています。
私もこのお餅の中にあんこを挟んだ柏餅が大好きです。
柏餅だけでもとても美味しいのですが、これを濃いお抹茶と一緒に頂くとまた一段と美味しさが増します。これが、コカコーラだと何だかな?という感じになってしまいますよね。
そして、この柏餅とお抹茶をきれいな景色を眺めながらお茶室で頂ければ最高です。
美味しい柏餅、濃いお抹茶、すばらしい景色、静かな茶室の雰囲気これらが組み合わさるととてもすばらしいと誰もが経験上、知っています。しかし、この組合せがどうしてすばらしいのか科学的に説明しなさいと言われても、きっとまだ分かっていないこともあるだろうし、なかなか難しいのではないかと思います。
突然ですが、漢方薬もこれと同じなのです。
風邪を引いて寒気がしたときなどに温めて元気がでる桂皮(シナモン)という生薬があります。
また首筋が張ったり、頭痛がしたりするときに効果のある葛根(クズの根)があります。
胃腸の調子をよくする大棗(ナツメ)、発汗することで熱をさげる麻黄という生薬があります。
さらに生姜や甘草なども絶妙の配合で組み合わせた物が風邪の時や肩こりなどに使う葛根湯です。
良い物は組み合わせて使うのが東洋医学です。そして、この組合せ方は長年の経験からきています。
最近では桂皮にはインフルエンザウイルスの増殖を鼻粘膜で抑制する効果があるなどの科学的なことも分かってはきていますが、まだまだ分からないことも多くあるのが事実です。
しかし、長年の経験上この組合せが風邪の引き始めにとても効果があることは約2千年前から分かっていて、今も使用され続けているというのが東洋医学です。
一方西洋医学はどうでしょうか?
西洋医学は例えば、麻黄はどうして発汗して熱をさげるのだろうか?と考え、この麻黄のなかの有効成分であるエフェドリンを精製してお薬として使用します。
組合せではなくて、単一成分を抽出して薬剤として使用するわけです。単一成分なので、するどく効果がでる代わりに作用は単一でシンプルです。例えば下剤なら下剤で便秘に効果があるという訳です。
一方漢方薬は下痢にも便秘にも効くという方剤があります。これはお腹の調子を整える作用で決して下剤ではないのですね。
東洋医学、西洋医学どちらにもそれぞれ欠点、利点がありますのでうまく患者さんの症状や病態に応じて使い分ければよいと思うのです。
ここで柏餅の話にもどりますが、あんこのなかのグルコースだけを取りだしてそれを食べても、きっと甘いだけで柏餅を食べる美味しさはないと思うのです。お水でいうと実験室で使うH2Oとミネラルウォーターではどちらが美味しいかな?ということです。実験には不純物の入らないH2Oが向いていますが、自分が飲むならミネラルウォーターの方が美味しいという事です。(らいむらクリニックのウォーターサーバーは富士山麓のミネラルウォーターを使用しています)
これは本当にそうで、私は大学院生時代に漢方薬の基礎実験をやっていました。
この漢方薬の基礎実験がくせ者で、純粋な単一成分でないために、均一な実験データをだすのがとても難しく、またデータの解析がとても複雑になってしまいます。これが、また漢方薬の科学的なデータをだす大きな障害のひとつで、まだまだ科学的に解明されていない理由のひとつでもあります。
おかげで、言い訳ではないのですが、普通なら4年で卒業できる大学院での実験生活を6年もかかってしまいました。それはそれで良かったのですが...。
それで私には壮大な目標があります。
それは全国の有名な銘菓を一生のうちに、現地に行ってできるだけ食べるという目標です。
47都道府県にそれぞれに銘菓があります。もし、1年に一度旅行をして食べても47年かかってしまいます。すでに私の年齢では達成できそうにありません。そしてさらに実は銘菓は各県に一つということはなくて各市、各町、各村にひとつ以上あるのです。ということで週に一回旅行をしてもすでに間に合わないかもしれませんね。
人生あっという間ですね。ということでゴールデンウイークには事前に計画をたてました。
ゴールデンウィークに何をしたかは、また院長コラムに書きたいと思いますので、お楽しみに。