第10回(2015/07/04)
各地で雨が降り、恵みの雨なら良いのですが、地域によってはあまりの大雨に大変な所もあるようです。
頭痛の患者さんにとっては、この梅雨時期は頭の痛い季節となります。
この梅雨にちなんで今月は私の生まれ故郷和歌山の名産でもある梅干しのお話をしたいと思います。
梅に雨と書いて梅雨ですが、この時期が青梅が出回る旬の季節なのです。
梅の原産地は中国ですが、奈良時代には日本に伝わり、奈良時代は花見と言えば現在の桜とは違い梅の花でした。漢方薬にも梅の実を熏製にした烏梅(うばい)があり、江戸時代の図説百科事典であった「和漢三才図会」に烏梅は脾・肺二経の血分の薬で、インフルエンザのような流行疫病を治し咳・熱をとめる薬効があると記載されています。
烏梅は下痢止めや駆虫薬としても使用されています。平安時代の日本最古の医学書である「医心方」にも、当時の病に臥していた村上天皇が梅干しを食べて元気になったという記載があるほどです。
江戸時代には一般の家庭にも梅干しが普及し、明治時代のコレラや赤痢が流行したときにも、その予防と治療に梅干しが用いられました。梅の塩漬けのときに出る「梅酢」は調味料に使える以外にも殺菌作用がありうがい液等にも使用されます。
梅干しには色々な種類がありますが、なんといっても有名なのは南高梅でしょう。
南高梅は和歌山県のみなべ町で誕生しました。江戸時代より紀伊田辺藩の奨励で盛んになった梅栽培ですが、戦後の復興期に栽培品種を統一しようとのことで、町内にあった100種類以上の梅のなかから選ばれたもっとも優良な品種が南高梅(なんこううめ)です。この品種の選抜作業に貢献した地元の南部高校の愛称にちなんでつけられたのが南高梅なのです。有名な南高梅は高校の名前だったのですね。
私が田辺にある国立南和歌山医療センターで仕事をしていたとき、その当時は高速道路が御坊(みなべ町の手前)までしか開通していなかったため、高速道路をおりてからは下道をずっと走ったものです。
その途中に春の季節には「一目百万、香り十里」といわれる、きれいな梅畑の中を通ったものです。
このじめじめとしてうっとうし梅雨の季節ですが、やまない雨はありません。必ず梅雨は晴れ、心地よい季節がやってきます。それまでの間、梅干しを活用し、ぜひ皆様も体調を維持してください。