第4回(2015/01/05)
あけましておめでとうございます。
院長コラム第4弾の今回はお正月にかかせない日本の行事についてお話をしたいと思います。
「一人これを呑めば一家病無く、一家これを呑めば一里病無し」といわれる宮中行事から現在にまで伝わる漢方薬とは何でしょう?それは屠蘇散です。延寿屠蘇散とも言って色々なバリエーションがあります。
屠蘇散の初出は一説には三国時代の名医華佗の処方によるものとされておりますが、李時珍(1518年ー1593年)の本草綱目にも出ていますが、中国では早くからすたれてしまいました。
一方日本では平安時代の宮中行事から江戸幕府、民間にまで広がり、近世になって曲直瀬玄朔(1549−1632)が烏頭や大黄などの毒性の強い薬味を抜いて、5味ないし6味としたものが今も続いています。
いろいろなバリエーションがありますが、白朮(蒼朮)、桔梗、山椒、防風、肉桂などを含むものが一般的で健胃作用や初期の風邪にも効果があるとされています。一年間の邪気を祓い長寿や健康を願ってお正月に屠蘇散にお酒や味醂、砂糖を加えて戴きます。
それから転じたものと思いますが、私の生まれた関西地方では屠蘇散がはいっていなくてもお正月に飲むお酒の事をお屠蘇と呼んで普段はお酒を飲まない家族や子供でもほんの少し口をつける習慣があります。
飲む人の順番には地域差があるようですが、もともとの中国の習慣では若い人から飲むのが正式なようです。これには本当は若い者が毒味をするという恐い意味もあったようですが、日本では家長から飲むというように変わってきたところもあるようです。
お正月におせち料理やお餅を食べ過ぎても大丈夫なように屠蘇散で健胃しておくのは理にかなっているのですね。
また江戸時代には医者が薬代の返礼に屠蘇散を配るというところもあったために、現在でも漢方薬メーカーさんや薬店で年末になると屠蘇散をくれるところもありますね。
私も屠蘇散をいただくと、「早いね、もうそんな季節か。」といつも思ってしまいます。
味のほうはそのままではあまり美味しくありませんが、お酒や味醂、砂糖を加えて飲みます。
それでも私には日本酒をそのまま飲んだ方が美味しいのにと思ってしまいます。
なにしろ平安時代から続くお正月行事ですから、ぜひ皆様もまずは伝統にのっとって屠蘇散を飲み、そのお口直しにまた美味しいお酒をいただくということでどうでしょうか?
当クリニックでも1月3日と5日は屠蘇散をご用意させて頂きました。
残念ながらお酒ではなくてお湯で振り出したものですが、子供さん方にも好評でした。
最後に屠蘇散の蘊蓄の一つをご紹介しますね。
曲直瀬玄朔は江戸時代前期の医師ですが、初代曲直瀬道三にまなび、2代目道三を継ぎました。正親町(おおぎまち)天皇、後陽成(ごようぜい)天皇、徳川家康の3男で2代将軍の徳川秀忠の診療をしていました。
時の天皇や将軍の侍医である曲直瀬玄朔も使用していたのがこの屠蘇散なのですよ。
今年1年も皆様方が健康で元気に過ごせるよう少しでもお手伝いできれば幸いです。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。