第43回(2018/04/06)
1月と3月の日曜日に三重に行ってきました。1月は四日市、3月は津です。
1月は頭痛、3月は痛みやストレスの漢方治療の話をしてきました。
三重は海も山もあり、伊勢神宮や伊勢志摩など風光明媚で松阪牛や伊勢エビなど美味しい食べ物にも恵まれとても良い所でした。実は津は以前からいちど行ってみたい所だったのでやっと念願が叶いました。
三重に行きたかった理由は、実は川喜田半泥子先生の記念館を見たかったのです。
川喜田半泥子先生は百五銀行の頭取でありながら、東の魯山人、西の半泥子と言われるくらい有名な陶芸家、茶人でもあります。その窯場である廣永窯(ひろなががま)を坪島圡平先生(半泥子先生の愛弟子)の弟子になる藤村州二先生の奥様である文華さんに無理を言って案内していただきました。
まずは有名な自作の半泥子像が迎えてくれる泥仏堂で宮内省・伊勢神宮献納品である不老菓子梅干と一緒にお茶を頂きました。
半泥子像の入る厨子の扉には「把和遊」「喊阿厳」と書かれています。これは何と書かれていると思いますか?
正解は「ハワユ(How are you?)」と「カム アゲイン(Come again)」です。とてもユーモアあふれる半泥子先生の気遣いですね。
この自作の像は多忙であった先生が、せっかく泥仏堂に来る人があっても失礼することがあってはいけないと自分の身代わりに置いたのですが、その像の首が回るようにできているのは、気に入らない客が来たときにはソッポを向くためだと言われています。
美味しいお茶を一服頂いてからギャラリーになっている仙鶴館展示室や登り窯をみせて頂きました。
仙鶴館(展示ギャラリー兼、お店)には「万からんや」と書いた額が掛けてあるのですが、これは三重弁で「まかりません(値引きしません)」という意味です。面白いですね。
それから半泥子先生設計の山里茶席にも入れていただきました。まず茶室に入ると「むちゃ苦茶に作る茶碗の無茶法師 これで飲む人 茶ッちゃ無茶苦茶」と書いた御軸がかかってあります。
無茶法師とは半泥子先生の別の号で作る茶碗も無茶であれば、茶の飲ませ方も無茶である。茶を飲む方も無茶にならざるをえないではないか?というような意味合いだと思われますが、半泥子先生は表千家の久田宗也宗匠にお稽古をつけて頂いた基本を納められた茶人でありました。
ただ、茶席に招いたお客様にお茶の心得が無く困っていらっしゃると、お点前をしていた半泥子先生がいきなり胡座をかいて、「お茶はこうやって飲めば良いのです」と片手でお茶碗を持ってのみ、お客様を安心させたそうです。このお軸の意味もきっと半泥子先生の気遣いなのですね。そこの茶室に座らせていただき、半泥子先生もここでお点前をしてお茶を楽しんだのかと思うと感慨深いものがありました。この茶室の様子は株式会社ちとせ(廣永窯)のホームページからパノラマビューが見れますので、皆様も茶室に入った気分を味わってみてください。
ここには山里茶席の他にも坪島圡平記念館や当時の茶室を移築した建物(山の館や鳴穂堂など)がいくつかあり、その中のひとつに写真の額がかかっていました「泥多佛大」と書いてあります。これは禅語で「泥多ければ佛(ほとけ)大なり」と読みます。
泥で出来た仏様は当たり前ですが、その泥が多ければ大きな仏様になるということですが、ここでいう泥とは煩悩や現在でいうストレスで、煩悩やストレス、苦悩が多いほど、それを克服出来た時には得るものが多いよ!!というような意味合いだと思います。
この額を見たときに、そうだ明日のストレスのお話の最後にぜひこの話をしようと思い、すぐに許可を得て写真を撮らせて頂き、次の日のスライドに追加し無事にこの話もしてきました。
そしてもうひとつ面白い額をご紹介しますね。「莫加椰盧」です。
これは何と書いてあるか分かりますか?正解は「ばかやろー」です。
半泥子先生が津市内の阿漕駅で電車を降り、扉を閉めた時、後ろから来ていた男に「バカヤロー」と怒鳴られたそうです。銀行の頭取ですから、誰も偉くなった半泥子先生にバカヤローなんて言う人はいなかったのだと思いますが、そんな時、バカヤローと言われて半泥子先生は「なるほどな、なるほど俺はバカヤローだと」思い、後日その男の人を探しお礼をしたそうです。それにちなんで茶室を鳴穂堂(なるほど)とつけて、ばかやろーの額を掛けたそうです。とても面白いエピソードですね。
なんだか仕事に行ったのに、とても癒やされ元気をもらった三重でした。
お忙しい中、窯場を案内していただいた文華様、また休日にもかかわらず講演にご参加いただいた先生方、また講演の準備をしてくれた現地のスタッフの皆様に感謝致します。おかげさまで講演も無事終わり帰りの津の駅では駅構内にKIOSKの代わりに井村屋さんがあります。井村屋さんは三重が本社なのです。
それからベビースターラーメンで有名なおやつカンパニーの本社も三重です。お土産には三重限定松阪ビーフ味のベビースターラーメンと伊勢志摩サミットで飲まれた清水清三郎商店の日本酒「作(ざく)」を購入しました。
銀行の頭取の仕事をしながら陶芸家でも茶人でもあった半泥子先生は私の憧れです。私もあやかり、煩悩だらけの私は全泥子、無茶法師に対し破医者(やぶいしゃ)を名乗り活動しようかな?なんて考え中です。ぜひ、皆様もいちど三重を訪れてみてください。とても良い所ですよ。また春には私も作陶再開です、去年作った作品もまた出来てきますので、機会があればコラムで紹介しますね。お楽しみに!!