第24回(2016/09/05)
9月に入り、少し暑さも和らいできましたね。ただ、9月は台風のシーズンでもあります。
台風のことを昔は野分(のわき・のわけ)と言いました。これは野の草を風が吹き分けるということからきています。あの有名な源氏物語にも野分きの吹き荒れた後、夕霧の見た紫の上や明石の姫君の様子を述べる部分が第28巻にあり、その巻名に野分が使われているくらいです。
この台風による気圧の変化で片頭痛やめまいが悪化します。
この季節、頭痛やめまいが辛い患者さんがとても多くいます。
この気候の変化だけは変えることができないため、この季節は我慢の季節となるのですが、昔からこの気候の変化による頭痛やめまいに五苓散という漢方薬が効果のあることが分かっています。
この五苓散は2013年の日本頭痛学会が出す「慢性頭痛の診療ガイドライン」にも頭痛に効果があるということで推奨されている漢方薬なのです。
二日酔や乗り物酔いにも効果のあるお薬で私も時々お世話になっています。
よく片頭痛の患者さんには片頭痛は悪いことばかりじゃないというお話をさせてもらっています。
時代が違えばすごい人になれた可能性もあるのです。
片頭痛の人の脳の能力は高く、天気の変化などが事前に分かる人がいるくらいなのです。
例えば雨の降る前の日に頭痛がひどくなり、明日は天気が崩れるなと分かるという人が多くいます。
天気予報の発達した今と違い、昔はこの天気が読めるということはすごい能力なのです。
たとえば卑弥呼や上杉謙信も片頭痛持ちだったと言われています。田植えの時期や何かの祈りの儀式のときに雨が降るのがわかったらどうでしょうか?それはすごい能力として認められることになりますし、合戦のときに雨がふるかどうかで戦略が異なってくると思います。それが事前に分かれば戦いを有利にすすめられ百戦錬磨になるわけですね。
ほかにも片頭痛の患者さんには音過敏や光過敏がある人がいますが、これは言い換えると音や光をとらえる能力がとても発達しているということにもなります。
プロのピアニストにも片頭痛の方が多くいたり、ピカソなども片頭痛だったと言われています。片頭痛の患者さん達は頭痛で辛い事もあるけれど、それだけ脳の能力が高いということなのですね。
私は鈍感でマイペースなため頭痛がないのですが、クリニックのスタッフは敏感で繊細なため、私の鈍感さを注意してくれ、色々な事に気付かせてくれます。例えば、今日はきっと患者さんが多いですよと予言してくれますが、その通りになりますね。
台風は大変ですが、それが過ぎると空気がきれいになり、見事に晴れ上がります。これを野分晴れと言います。台風一過ですね。いまでも騒動が収まり晴れ晴れとすることに用いられます。
片頭痛やめまいの患者さんももう少し我慢すれば野分晴れのすがすがしい季節がやってきます。
それまでは規則正しい生活を心がけ、うまくお薬を利用して乗り切りましょう。