第130回(2025/12/06)
10月の終わりにパシフィコ横浜で開催された第84回日本脳神経外科学会総会に参加してきました。今回のテーマは脳神経外科医の問いー未知なる世界に挑むーでした。色々なプログラムがあったのですが、その中でも印象的だったのはソニーコンピューターサイエンス研究所の茂木健一郎さんの特別講演で「脳とAIのアライメント」です。

AI には大きく分けて2つの分類があり一つは Trans humanism:AI の力をかりて人間の力が進化していく、そしてもう一つは Post humanism:AI が人間にとってかわるです。例えば僕らがAIのアプリを利用して英語を勉強して英語を喋れるようになるのは Trans humanism 的なAIの使い方、英語はAIが同時通訳をやってくれるからもう勉強しなくても良いというのは Post humanism(同時通訳者の仕事もなくなる)。
それでこれは以前から言われていたことなのですが、AIが人間を超える能力を持つ日がくる、これをAIの分野でsingularity(技術的特異点)といいます。シンギュラリティ(技術的特異点)とは、1980年代からAI研究家の間で使用されるようになった言葉で、人間と人工知能の臨界点を指す言葉。つまり、人間の脳と同レベルのAIが誕生する時点を表しています。そして、すでにもうその時代が来ているのです。
例えば日本のプロの将棋や囲碁の世界を見てみましょう。プロ棋士の羽生善治さんや藤井聡太さんは将棋のAIソフトで腕を磨いてきましたが、すでにAIに敗れる時代に突入しています。それどころか恐ろしいことに、今ではAI同士の対局があるのですが、プロの羽生さんがその対局を横で見ていても指し手の意味が理解できないところにまできているそうです。
これを医療に置き換えてみましょう。これからは診断や最適な治療法の判断は1人の医師の知識や判断よりも膨大なデータを日々蓄積しているAIの方が優れている時代になると考えられます。それどころが、私達医師がその判断が理解できない領域に達する時代がやってくる可能性もあります。つまり、患者さんがクリニックにきてくれた時に、私達医師がその患者さんの診断や治療方針をAIに訪ねた時、すでに私達医師が理解できない範囲の答えが返ってきて、私達医師が患者さんに「僕には理解できないのですが、AIによるとあなたの最適な治療はこれらしいですよ」という時代がきてしまうかもしれませんね。
そうすると我々医師はいらなくなるのでしょうか?私はそんなことはないと思っていますし、そう信じたいです。患者さんもちょっとしたことは家でAIに聞くのは便利で良いと思うのですが、すごく悩んでいること、心配なことは、やはり自分が信頼できる人間の医師から聞きたい(例え、その先生がAIを使って調べていたとしても)という心理があると思うのです。つまりAIと患者さんとをつなぐインターフェイスとしての医師の役割は無くならないと思うのです。
つまりこれからの医師は医学的な知識や技術はもちろん必要なのですが、それ以上に人間としての患者さんに寄り添う能力や魅力が必要とされる時代になってくると思います。そのためには医学以外の勉強の方が大切になってくるのではと学会に参加して思いました。以上学会報告でした。また色々な学会に行った際には学会報告をしますので、これからもAIによる学会報告よりも、僕の院長ブログを楽しみにしていてください。よろしくお願いします。