第133回(2026/05/11)
昨年の2025年2月に国際頭痛学会が頭痛治療の目標を発表しました。その目標はなんと、片頭痛の中等度から重度の頭痛の完全消失です。つまり新しい片頭痛の原因となるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)阻害薬の注射薬、飲み薬が発売され、それが現実的になってきているということです。

僕が20数年前大学病院で頭痛外来を始めた頃は、片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤もなく、暗黒時代でした。頭痛の患者さんがきたら、頭部CTやMRIをとり、異常がなければ片頭痛の診断で頭痛が治るまで、痛み止めや吐き気どめの点滴をして2、3日入院させておくという治療が主でした。
それから数年後に片頭痛の発作時の特効薬であるトリプタン製剤の注射薬、点鼻薬のイミグラン、内服薬であるイミグラン、マクサルト、レルパックス、ゾーミック、アマージが出て救急で入院が必要となる片頭痛患者さんは随分と少なくなりました。またトリプタン製剤には血管の収縮作用があるため、狭心症や心筋梗塞などの持病がある方には使用できませんでしたが、その血管収縮作用がない新たな頓服薬であるジタン製剤のレイボーが登場しました。
またその当時は月に6回以上頭痛があれば、毎日、頭痛予防のお薬を飲んで、頭痛の発作自体を減らす必要があるとされていました。ただ、その当時片頭痛専用の予防薬はなく、元々別の病気の治療薬であった抗うつ薬であるトリプタノール、抗てんかん薬であるデパケンR、カルシウム拮抗薬であるミグシス、βブロッカーであるプロプラノロールなどを流用して使用していました。
片頭痛は神経と血管の周りの炎症が誘因なのですが、数年前から、その炎症の原因となるCGRP自体をブロックする注射薬が3剤(エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)が登場し、劇的に頭痛予防治療が進みました。また去年から今年にかけてはその注射薬の飲み薬であるナルティーク、アクイプタが登場しています。
また2021年の頭痛の診療ガイドラインでは予防治療が月に6日以内の頭痛でも、その数回の頭痛で学校や会社を休む、家事に支障があるなどの日常生活に支障がある場合には予防治療をした方が良いということに改正されました。
その中でのこの国際頭痛学会の出した提案、中等度から重度の頭痛の完全消失を目指すということなのです。今の私の治療でも中等度から重度の頭痛があり、日常生活に支障がある方は、これまでの治療薬、新しく出た注射薬、内服薬、漢方薬、鍼灸治療などを組み合わせて、できるだけ辛い頭痛の日がゼロになるよう治療を調整させていただきますので、ご遠慮なくご相談ください。