第41回(2018/02/06)
お正月があけたと思ったらもう2月です。千葉でも雪が降ったりして大変でしたね。
もうひとつ大変なのが今猛威をふるっているインフルエンザです。A型もB型も流行っています。
一般的にはA型のインフルエンザは症状が激しく、38度を超える発熱、寒気、関節痛、のどの痛みなどです。B型はその症状が軽いものの、下痢やお腹の痛みがでたりして、お腹の風邪の症状に近い場合が多いですね。
予防接種をしていても残念ながらインフルエンザにはかかってしまいます。ただ、インフルエンザにかかっても軽くすむため予防接種をしておくほうが良いと思います。
今年はあまり熱がでず、普通の風邪のような症状でも検査をするとインフルエンザ陽性という人が多い感じがしています。当院のスタッフも予防接種をしていたにも関わらずインフルエンザでお休みしたため、皆様には予約の変更を御願いしたり、電話での対応ができずにご迷惑をおかけしました。
ところでインフルエンザに漢方薬は効果があるのでしょうか?結論からいうと効果がありますね。
いろいろな論文があるのですが、よく使われるインフルエンザ時の漢方薬に麻黄湯があります。これは抗インフルエンザ薬と同等の解熱効果があり、また抗インフルエンザ薬よりも関節痛などインフルエンザに伴う症状も改善するという論文があります。私の場合には発症48時間以内に受診された患者さんには抗インフルエンザ薬と漢方薬を同時に処方することが多く、それ以降にこられた場合には漢方薬をお出しすることが多くなっています。
ではいったい麻黄湯はどのような機序でインフルエンザに効いているのでしょうか?
私達は体の中にインフルエンザウイルスなどの異物が体内に入ってくるとそれを食べて(貪食して)排除する機能が備わっています。それをオートファジーというのですが、これを発見した大隅良典先生はノーベル賞を受賞しています。このオートファジー機能を活性化してインフルエンザウイルスの排除を手助けするのが麻黄湯です。
一方タミフルなどの現在使用されている抗インフルエンザ薬はウイルスが増殖する際に細胞から出ていく所をブロックしてインフルエンザウイルスの増殖を阻害します。実はこのタミフルも元を正せば八角(大茴香)という生薬の成分から出来ているのです。だから早期にインフルエンザを診断し、この作用機序の違う抗インフルエンザ薬と漢方薬を組み合わせる事で治療することは相乗効果が有りより有効であると私は考えています。
これまでの経過をみていると患者さん達は2,3日で熱がさがりインフルエンザの激しい主症状も2,3日以内に治まっている方が多いですね。その後咳や痰が続いたり、だるさが続く方もいますが、それにはそれようの漢方薬もあるので大丈夫です。
ただ、インフルエンザが長引いてしまう人もいます。その多くは解熱鎮痛薬や市販の風邪薬を飲んでいる人です。インフルエンザにかかって熱がでるのは熱を出すことによってウイルスを退治したり、私達の免疫能をあげる作用があるのですが、無理に解熱鎮痛薬や風邪薬で熱をさげたためにかえって、免疫能の活性が阻害されインフルエンザの治癒が遅くなっているのだと思います。だから、熱が出たので解熱薬を下さいという患者さんもおられますが、よほどの事がない限り私は鎮痛薬を使用しないようにすすめています。お熱が出ているのは治すために出ているのだと思って、漢方薬を飲んで温かくして安静にすることをおすすめしています。
豆まきが過ぎて、暦上はもう春です。クリニックの玄関先にも紅梅が咲いてとても良い香りを漂わせています。昔、中国の晋の武帝の時代に学問に親しむと花が開き、学問をやめると花が開かなかった梅があったというお話があり、この事から梅の別名を好文木と言います。私も皆様と一緒に今年はいろいろな事を勉強し梅を満開にしたいと思いますので、皆様もぜひご自分の健康維持についての勉強をしてみてください。